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(裏)映画への独り言

映画のレヴューは“今週の一本勝負”をご覧ください。
July 22

転々

 転々 
 
監督:三木聡
主演:オダギリジョー
    三浦友和
 
84万円の借金を抱えた大学8年生の竹村文哉(オダギリジョー)は、借金の取り立てにやってきた福原愛一郎(三浦友和)から、自分の散歩に付き合ってくれたら100万円やろうと持ちかけられる。借金を返す当てがまったくない文哉は、福原と一緒に井の頭公園を出発し霞ヶ関へ向かって歩き始めるが……。
「亀は意外と速く泳ぐ」は半分ついていけなかったが、なんだか惹かれた。「イン・ザ・プール」は脚本が気に入らなかったが、後味は悪くなかった。「図鑑に載ってない虫」はゼリー藤尾にKOされた。小ネタとの相性はけっしてよいとは言えないが、なんだか見てしまう三木聡監督作品。この「転々」は岩松了とふせえりの場面をなくせばもっとカッコいい作品になるはずなのに、コメディへのこだわりを捨てずに自分の作りたいものを作っている。
意外だったのは、東京を面白く見せたところ。二人が歩く道はいわゆる名所とは少し違ったところで、その見せ方がよい。深大寺のような情緒のある場所や、町の時計屋、窓から手を伸ばせば届きそうなところに信号機がある安宿。ただ、カッコいい構図で撮っているのに深大寺ではファースト・キスの話でおちゃらけ、時計屋の親父はやたらと強い。そんな展開で進んでいくのが心地よい。
この散歩で文哉は経験したことのなかった“家族”を経験し、大きく人生観がかわったことだろう。しかし、福原はどうだったのだろうか? 麻紀子(小泉今日子)の家でガラス窓がうまく閉まらず、いくらがんばっても隙間ができてしまうシーンが頭から離れない。
 
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June 30

シンプル・プラン

 A Simple Plan 
 
監督:サム・ライミ
主演:ビル・パクストン
    ブリジット・フォンダ
 
田舎の肥料店で働くハンク(ビル・パクストン)は、兄のジェイコブ(ビリー・ボブ・ソーントン)、兄の友人のルー(ブレント・ブリスコー)と父親の墓参りに行った帰りに、森の中で雪に埋もれたセスナ機を見つける。さらに中から440万ドルの現金を見つけた3人は、自分たちのものにしようと計画するが……。
サム・ライミが正攻法で撮った秀作と言える作品。「シンプル」な計画だったはずが、少しずつ狂い始めて、気がついてみると登場人物たちは引き返せなくなっている。その場面場面での登場人物の心理を表情で伝えようとするところがよい。セリフに頼らない作り方に好感が持てる。登場人物が少なく、舞台となる田舎町は雪の中で、ストーリーにも明るさはないのだが、2時間を長く感じさせないのは、演出と役者のうまさがあったからだろう。中でもビリー・ボブ・ソーントンは難しい役どころをうまく演じている。一方、監督は美しく見せようといろいろ工夫をしていたように見えたが、ハンクの妻サラは中途半端な人物になってしまい、ブリジット・フォンダは魅力を出し切れていなかった。
 
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May 26

パンズ・ラビリンス

 El Laberinto del Fauno 
 
監督:ギレルモ・デル・トロ
主演:イバナ・バケロ
    セルジ・ロペス
 
1944年、フランコ政権に反発するゲリラを鎮圧するために山奥に駐屯していたビダル大尉(セルジ・ロペス)と再婚したカルメン(アリアドナ・ヒル)は、娘のオフェリア(イバナ・バケロ)を連れて、ビダル大尉のもとを訪れる。オフェリアは妖精に導かれて迷宮の奥深く入り込み、パン[牧神](ダグ・ジョーンズ)から、意外なことを聞かされる。そして……。
PG-12指定の社会派ファンタジー。オープニングの、横たわった少女の顔から流れていた血が逆
回しでもとに戻っていく場面の異様さで、気軽に見られる作品でないとは思ったが、これほどまでにダークな作品とは……。
ビダル大尉はフランコ政権の象徴で恐怖による圧政を実践する。ゲリラたちは果敢に立ち向かう
。一見、ゲリラたちを称えているかのようだが、オフェリアがパンから与えられる3つの試練と結びつけて考えると、最後の「無垢な者のために血を流す」というところがひっかかる。ビダル大尉はもちろんだが、ゲリラたちにもこういった気持ちはない。人間の行いの不条理さなどを伝えたいのだろうか? それにしては、口を切ってしまうシーンやその後で縫うシーンなど高尚さのかけらも感じられないシーンがあったりして、全体をどう捉えてよいのかわからない。ストーリー展開やカメラワークは面白いが、やりたいことを詰め込みすぎた感がある。
 
el_laberinto_del_fauno_1   el_laberinto_del_fauno_2
May 02

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 
 
監督:吉田大八
主演:佐藤江梨子
    佐津川愛美
 
交通事故で亡くなった両親の葬儀のために東京から帰省した和合澄伽(佐藤江梨子)。澄伽は女優になるために上京したが、鳴かず飛ばずだった。澄伽は自分が特別な存在であると信じて疑わず、成功できない理由はすべて他人にあると思っているような女性だった。実家で、母の連れ子だった兄の宍道(永瀬正敏)、兄嫁の待子(永作博美)、そして実の妹の清深(佐津川愛美)との生活が始まるが……。
オープニングの交通事故の凄まじいシーンが物語のきっかけではなく伏線になっていたり、澄伽の過去が明らかになるたびに現在の行動に納得がいくようになっていたりと、なかなか凝った作品である。壊れた扇風機の使い方も面白い。なぜ、動かないのに出しっぱなしなのだろうかと思っていたら……。
そして、この作品の中で一番輝いていたのは、何といっても待子を演じた永作博美。登場したと思ったとたんに突き飛ばされてコロコロ転がり、ヘンな人形作りに夢中になっていて、不幸な境遇だったためか底抜けに明るい。思いっきりわがままな澄伽と対照的な存在である待子は、とても難しい役どころではないかと思うが、永作博美は見事だった。
「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」という言葉を言えるのは待子だけではないだろうか?
 
funuke_1   funuke_2
April 22

エディット・ピアフ ~愛の讃歌~

 La Mome 
 
監督:オリヴィエ・ダアン
主演:マリオン・コティヤール
    シルヴィー・テステュー
 
路上で歌を聞かせて生活していた母によって祖母の経営する娼館に預けられた後、路上で大道芸を見せ日銭を稼ぐ父と生活するようになったエディット・ジョヴァンナ・ガション(マリオン・コティヤール)。路上で歌っていたところをクラブのオーナー、ルイ・ルプレ(ジェラール・ドパルデュー)に認められ、“ピアフ(雀)”としてデビューする。彼女の歌唱力は観客を魅了し、瞬く間にスター歌手となる。アメリカへも進出し、ボクサーのマルセル(ジャン=ピエール・マルタンス)との幸せな日々を送る彼女だったが……。
マリオン・コティヤールがとにかくすばらしい。ステージで歌いだすまでのおどおどした様子をかわいらしく演じたかと思うと、スターにありがちなわがままぶりを憎たらしさたっぷりに見せてくれる。そして、晩年の薬でぼろぼろになった姿は本当に痛々しい。“Taxi”のヒロインがこんなにもすばらしい女優になるとは。
カメラワークも凝っていて、特にアメリカのホテルで飛行機事故の知らせを聞く場面は秀逸。ホテルの部屋から部屋へ移動するピアフと追いかけるカメラ。時にはピアフと違うルートでカメラが動き、事実を知ったピアフの絶叫。そしてステージへ。お見事!
時間軸を統一させない展開は少しうるさく感じるが、よくできた作品だと思う。
 
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